安田まゆみの気まぐれ日記

2013年08月19日

「昨日のカレー 明日のパン」5

夫亡きあとの「姻族」とかかわりを持ちたくない
どうしたらよいのでしょうか?

シングルになった女性から、そんな相談を受ける機会は多い。

離婚すれば、お相手の家族ともすっぱり別れることはできるが
死亡した夫の家族とは、手続きをしないと、無関係ですと別れられない。
生前の関係が問題なんですよね。
その後もうまくやっていけるかどうかは、ケースバイケースだと思います。

「昨日のカレー 明日のパン」は大好きな脚本家、木皿泉の初めての小説。
いくつかの短編が重なって、一つの物語を作っています。

この本の主人公は「ギフ」と「テツコ」。
そう、
夫亡きあとの舅(ギフと呼ばれている)と嫁(テツコさんと呼ばれている)が
仲良く同じ家で暮らしている話なんです。

人間的にも愛すべき人この二人の暮らしぶりや周りの人達とのほんわかした、
それでいて、
人生の決断を迫るような
大切な話が詰められている本です。

とってもいい関係なんです。ギフとテツコは。
男と女ではなくて、良い同居人として。
姻族もいいよなぁ、って思えると思います。
こんなシチュエーションは、理想的でちょっとずるいかも(笑)。
でも、生活感は、とってもリアルです。

笑ながらその切なさに胸がきゅ〜んとなってしまう。
そんなエピソードがたくさん織り込まれています。

木皿さんのドラマは、セリフが印象的です。
 胸がきゅい〜んと打たれる感じなんですよ。
「すいか」「野ブタ。をプロデュース」「セクシーボイスアンドロボ」「Q10」
どれも、じ〜んと来るセリフのやり取りがあって、良いんですよ。

この小説も同じで、おかしいんだけど涙がでちゃいます。
暖かい言葉、心揺さぶる言葉、厳しい言葉。
いっぱい出てきます。

でも、
人間っていいよなぁ。
人とつながるって、いいな。
人って、信じて良いよね。

って、思います。
信じることって、潔さが必要なんですけど、
そこに温かいものが流れていることが分かる作品です。


テツコのボーイフレンドの岩井さんが小学生の女の子に作った
「魔法のカード」のエピソードもなんだか「すごい」です。
ちょっとそういう表現しかできない。私には思いもつかないから。

まあ、いろいろあって、その小学生は「人間って、すごいです」って言うんです。
(この子はそこに気が付けてよかった)

で、さらに
「八木さんにおしえたかったなぁ」と。(八木さんとは八木重吉のこと)

彼の詩を暗唱するんですよ。

   わたしみづからのなかでもいい
   わたしの外の せいかいでも いい
   どこにか「ほんとうに 美しいもの」は ないのか
   それが 敵であっても かまわない
   及びがたくても よい
   ただ 在るといふことが 分かりさえすれば、
   ああ ひさしくも これを追うにつかれたこころ

そして
「八木さんに言ってあげたかったなぁ。あるかもよって」
いううんですよ、小学生が。

この夏、熱さにボーっとしている頭とこころにお勧めの1冊です。

木皿泉ワールドの住人にもっと会いたい。
もっといっぱい書いてほしいと願っています。


昨夜のカレー、明日のパン
木皿 泉
河出書房新社
2013-04-19








Posted by MAYUMI YASUDA at 06:30│Comments(0)TrackBack(0)

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